

コモド便り
COMODO NEWS
新年度に向けて
新しいかかわり方を考えたい
「しつけない“しつけ”」をご存じでしょうか。子どもが将来社会の中で生活していくために、お友だちとのかかわり方や社会的なルールを教えるのが「しつけ」です。「子どもにしつけをするのは親の役目」という考え方を多くの人が持っているかもしれません。でも、しつけを考えるときにいわゆる日本的な「厳しさのあるしつけ」をし過ぎると、子ども自身が自分で考える力が育ちにくくなる面もあるようです。
子どもが自発的にしたことを親から否定される場面が多いと、自分がやりたいことやどうするべきかを考えるよりも、怒られるからやらないことや、親や先生の言うとおりにすることを学ぶようになります。親が強制するようなことが多いと自分から何かをやってみようとか、自由な創造性を持って集中して取り組む力を発揮しにくくなってしまうそうです。自分で何かをやってみようという意欲、自由な創造性などは“非認知能力”といわれ、忍耐力・社交性・自尊心など数値で測りにくい能力のことです。厳しく叱るなどしてしつけを進めると、そのときは一見いろいろできたように感じるかもしれません。しかし、自分で考えることができるようになりません。これまでの価値観が通用しないようになってくるこれからの社会の中で、“非認知能力”を伸ば すことは重要であると考えられています。
では、子どもの個性を伸ばしながらも社会のルールを教えるにはどのような関わり方をするといいのでしょうか?まずよく見ることです。どこまでできていて、何ができないのか、できるためにはどんな工夫をするとよいのか。できていることをちゃんと認めてもらえ、できないことの手助けをしてもらえると安心感や信頼関係が親子の間に育ちます。安全で安心できる環境という土台があって、初めて子どもはさまざまなことを学ぶことができます。子どもが生活習慣や社会のルールを学ぶための関わり方として、以下のようなポイントがあげられます。
・共感する(子どもの気持ちを言葉にしてあげる)
・待つ・見守る(気持ちが切り替わる時間を待つ)
・選択肢や見通しを示す(「こうしてみる」など子どもが選択できる言葉がけ)
・Iメッセージ(「ありがとう」など大人の気持ちを伝える)
※Iメッセージ ・・相手を尊重したコミュニケーション方法
具体的にはどのように声かけやコミュニケーションをすればいいのでしょうか?たとえば、スーパーに買い物に行って、お菓子売り場の廊下で子どもがお菓子を欲しがって癇癪を起こしたとします。子どもが欲しがるものを見つけてしまってから「買いません!」と戦うのは大変ですよね。目の前に大好きなものがあるのに我慢をするのは大人でも難しいものです。まずはその場面がお子さんにとって「難しい状況である」ことを理解することが大切です。「買わないと約束したのに欲しがる悪い子」「忙しいのにわがままを言う悪い子」として厳しくしつけなければと思うのと、子どもにも理由があると思って声をかけるのでは、声のかけ方が違ってきます。「これ大好きだよね、買ってほしいんだね」と共感してあげたり、癇癪が落ち着くまで待ってみたり 「おうちでポップコーンを作ろうか?」とほかの選択肢を示したり、「昨日も買ったからむし歯が心配だな」と親の気持ちを伝えたり、「今日はこの1つだけ買おうか」とお互いの折り合いをつけてみたり、などです。
毎回うまくいくとは限りませんが、子どもの心に寄り添って尊重することで、子ども自身が自分で気持ちをコントロールすることにつながります。この、自分自身の気持ちや行動をコントロールする力も“非認知能力”の 1つです。お子さんと過ごす時間が多くなる長期休暇、是非この方法で大人も子どももストレスのない日々を送ってみてください。
保護者会のご参加、
ありがとうございました。
お忙しいところ参加してくださった保護者の皆様、ありがとうございました。 当日、どのグループでも話題に上がっていたこと、年齢が上がったら新たな不安として出てくることなど、質問内容は多岐に渡りました。今年度も札幌市自閉症・発達障がい支援センターおがるの塚本さんにもお越しいただき、幼児期から成人期までの支援をされているご経験値から、お話しできることを様々教えていただきました。
<就学までの流れ(手続き)について>
札幌市教育委員会が行っている「教育相談(就学相談)」に行き、発達検査を受けたり相談をしたりする中で、就学先(学級も含めて)を決めていきます。お子さんにとって選んだ学級(学校)が『適した環境』であるかどうかで、お子さんの「安心」「過ごしやすさ」「学びやすさ」「生きやすさ」に大きく関わってきます。様々な情報(保育園や幼稚園からお聞きする普段の様子・療育での様子・発達検査の結果・ご家庭の意向)を踏まえ、お子さんにとって『学習の積み重ね』となる為に適した場所選び(普通級・支援級・支援校)を行っていくことが望ましいと思います。主には、普段の様子が大変重要となります。
保育園や幼稚園に通われているお子さんでしたら、そこでどのようにお子さんが過ごしているのか、補助の先生が付いているのか、付いているならばどの程度介入しているのか、集団とどれくらい同じ活動ができているのか、などをお聞きしておくとよいでしょう。「教育相談」は年長の 9 月頃から受けることができますが、予約が殺到しますので、それよりも前からご連絡してみることをお勧めします。ちなみに、幼児は幼児教育センターにて、幼児教育相談も年少の頃から受けることができます。中学校での学級選びは、公立高校の受検に関わった要素が出てきますので、より悩まれるケースが多いそうです。その為にも、小学校のうちに「学習」する土台作り(課題に向かえるか・机に一定時間座っていられるか・困ったときに相手に伝えられるか等)を安心できる環境において身につけておくと良いと思います。
<病院の考え方>
病院に早くつながり、検査を受けたり医師からアドバイスを もらいお子さんの特徴を知ったりすることは、お子さんにとって早い段階からそのお子さんの発達に応じたサポート(関わり方や)環境の調整の見通しを 立てられる、というメリットがあるかもしれません 早期療育 。学校の先生によっては、お子さんの特徴 や本人にとってわかりやすい伝え方 をお伝えしておくだけで、 お子さんが学校生活で混乱したり失敗経験を重ねることなく過ごせるよう、取り組んでくださったりしています。お子さんに特徴がありながら、情報無く学校側がそのお子さんと接していると、『忘れ物をしやすい子』『すぐお友達とトラブルになる子』『指導が必要な子』と、本人には合っていない支援や不利な印象が先行し、お子さんにとって学校が過ごしやすい環境とはなりにくくなるかもしれません。そうならないよう、お子さんの発達段階や特徴を知っておくこともプラスに働くこともあるでしょう。ただし、得意不得意といった発達の凸凹の面は、必ずしも病院ではなくても良い場合もあるかもしれません。 療育の先生や保育園・幼稚園の先生など、身近な相談者に相談をしてみてもよいと思います。
<就学後の学力について>
支援学級は普通学級よりも国語や算数の時間が減ってきます。しかし一方で、「生きる力」に関わった教科が 普通学級よりも多く、そこで将来を見通した様々なスキルを身につけていくことになります。 大人になって思うことですが、「学力」=「自立 」とは限りません。対人スキルとして、職場の同僚や上司とうまく関われるかや、複数ある仕事に優先順位を立てて作業に取り組めるか、毎日起きて退勤まで仕事をこなせるだけの体力があるか、等が大切だと思います。豊かな心も勤労の土台となります。とは言っても「学力」も身につけたい、とお考えになる保護者の方も多いと思います。「学習」に関しては、現在様々なサポートがあります。学習塾や家庭教師、さらには放課後等デイサービスの中でも「学習支援」を行っている事業所もあります。発達の配慮をしながら学習のサポートをしてくれます。そのようなサービスにかけ合うことも1つお勧めします。
お子さんの見方
どんなお子さんでも、できることとできないことがあり、得意なことと苦手なことがあります。一般的な発達と同じスピードで習得するものもあれば、早くに習得してしまうもの、逆に遅れて習得するものもあります。また、習得の仕方も人それぞれで、これは大人であっても同じことが言えます。例えば、肉じゃがを作ること1つにしても、レシピを見ずに母親に作ってもらった味を思い出し、材料を揃えどんな調味料が入っているかを想像して何となく同じような料理を作ってしまう人、料理本をよく読んで文字から情報を得た方が作りやすい人、テレビやアプリな どの動画から視覚的な情報を得た方が入りやすく作りやすい人、など様々です。同じ料理を作っても、1回目でうまくできる人もいれば、数回作ってうまくできる人もいるでしょう。また、卵焼きなどは1回目では中々上手に巻けなかったけれど、火加減や焼き時間、卵の量など、コツを掴むことで上手にできるようになった、というものもあるのではないでしょうか。
お子さんも同様で、「着替えること」「ご飯を食べること」「挨拶をすること」「お友達と一緒に遊ぶこと」など、幼児期・学童期に身につけておきたいこれらのことも、習得の仕方はそのお子さ んごとに違いますし、できるようになるスピードも違います。ですから、お子さんが苦手とするものであっても、身につけてもらいたい生活スキルがあるとするならば、一般的な方法だけではなく、そのお子さんにとって「わかる」方法に変えて習得してもらいましょう。
お子さんの得意・不得意も把握しておくと、支援もスムーズになります。「ある年齢になれば一般的に身につくスキル」も、それはあくまでも目安です。その情報は頭の片隅に入れつつ、目の前のお子さんに合わせて見てあげましょう。そうでなければ、「できるもの」と思っていると、それが できなかったときについ怒ってしまうものです。しかし、「できないかも」「苦手かも」という眼で見てあげていれば、「怒る」ではなく「丁寧にどうしたらいいかを教えていく」ことや「感情的にならないで子どもに接する」というやり方で、適切に伝えることができます。面倒くさいやり方ですが、少なくともその子どもは怒られることはありません。大人の場合、例えば日常的なスキルで40キロのマラソンが必要だとします。マラソンを得意としている人は「走るよ」「走っておいで」で達成できるかもせれませんが、普段から取り組んでいない、さらには体力 作りもコースも水分補給の仕方も知らない 私のような 人であれば、「できないよ!」「やりたくない!」とやる前から主張するのではないでしょうか。しかし、40キロのマラソンが日常的にやらなければならないものだとしたら、 私は 毎日が苦痛で取り組みも消極的どころかその場面から逃げてしまうかもしれません。どうしてもやらなければならないことだとするなら、まずは体力作りから、走るフォーム作り、そしてマラソンに
適したウエアやシューズの準備、ドリンクの準備、回るコースの下見、そして、1日1キロから・・というスモールステップで 積み重ねたいな、と考えます。そうすることで、5年後には40キロを走ることができるようになるかもしれません。
お子さんの場合、この見通しの組み立ては周りの人が導いてあげることになります。「はさみで切ってごらん」「朝は起きたら着替えます」「相手の気持ちを考えて」と一般的に当たり前だと思われていることも、苦手だったりやったことがなかったりするスキルは、急に言われても「やれない」ようです。一般的なハードルから少し苦手な人向けのハードルに下げてみてあげましょう。日常の生活スキルも、スモールステップで、お子さんにあっ た方法で継続して取り組んでいくことで、やがて「大人になったときに身についている」を目指して取り組んでいきましょう。
参考文献:石川道子著『そうだったのか!発達障害の正解子どもの育ちを支えるヒント』
コモドの戸外療育
例年にない雪害で、対応に追われた1 月・ 2 月・・。やっと春の兆しが見えてき た 3 月は 、ほっと したことを思い出します。 この大雪のおかげか、公園に行けばいつもフカフカの雪で、お子さんたちにとっては絶好の遊び場となりました。 コモドは戸外療育を大切に、自然とエビデンス 研究で確かめられている証拠 を取り入れている療育施設です。
自然は今さら言うまでもないですが「子さんたちがさまざまなことを試しながら成長できる絶好の環境」で
あり、お子さんが生来もっている好奇心と、動き回ることへの自然な欲求について満たし、さらには感覚を刺激、太陽の光で心身の健康を増進、探求心を育み学びを支える基礎を作ります。コロナ禍が長引き益々家庭で過ごすことが多くなった今、我が子も然りネットやゲーム、テレビで余暇を費やす時間が自然と増えていますが、コモドへ来て、先生やお友達と外で目いっぱい身体を動かすお子さんの姿は ¨ 生きる力 ¨ をたくさん感じさせてくれています。
ただ、療育専門施設です。近年 の研究結果による環境の設定や工夫も欠くことができません。お子さんに覚えてほしいことはイラストや文字にした視覚グッズを利用し、負荷を減らすために睡眠・休養をしっかりととってもらうようご家庭と連携、疲れている時にはリラックスして発散できる活動を用意、そして刺激を減らした学習環境を個々に応じて設定するなど、様々取り組んでいるところです。
言葉の発達と戸外活動には密接な関係があります。というのは、自然には、子どもの言葉の発達を助ける多くの要素がありますが、重要な点は、自然はまだ発語のスキルをもたない幼いお子さんに さえ、目の前で見たことを誰かに話したい、という衝動をもたらすことです。脳には、身体の動きによって刺激される中枢がたくさんありますが、実は言語中枢もその 1 つです。 戸外活動ではでこぼこな地面を歩くなど、多様な運動が求められますが、その動きは言語中枢も刺激して言葉の発達を支えていると考えられます。言葉を習得するというのは、単に単語を覚えることとは違います。子どもはその言葉が意味することを体得し言葉を習得しているのです。
言葉とその意味は、感覚・運動刺激を通して獲得されたものなので、脳内で言語と運動は密接につ
ながっています。例えば、私たちが「蹴る」という言葉を発するとき、脳内では言語中枢だけでなく運動中枢も同時に活動します。「誕生日」と言えば、「嬉しい・楽しい」といった 感情をつかさどる部分も活動します。言葉は、単に文字や音としてではなく、それに応じたこころの動き、身体の動きと併せて記憶されているのです。だからコモドでは、体験的な遊びを通して、 実感を伴った言葉のやりとりをお子さんとしています。部屋の中に閉じこもっていては刺激されない感覚を、外に出てたくさん刺激し、発達へとつなげていきます。
お子さんにとっては、お部屋での自由遊びの時間は、好きな玩具でそれぞれ遊べますから、とても楽しい時間です。戸外活動へ向かう時には、その遊びを一旦やめて、活動を切り上げるのですが、そのタイミングはお子さんによっては苦手な時間となることが多く、いわゆる ¨ お子さん にとっては絶望的に感じている ¨ と言われているほど、促しに大人側の工夫を必要とする時です。戸外活動に行くことは、様々なスキルをフル稼働することで達成できていて、決して ¨ 当たり 前 ¨ にできるものではない と、 日々お子さんたちから学んでいます。
参考文献:『北欧の森のようちえん 自然が子どもを 育む~デンマーク・シュタイナー幼稚園の実践~』